過不足算の問題は中学受験の算数で頻出のテーマです。
条件を整理し、計算に落とし込む力が試されるため、苦手意識を持つ子どもも少なくありません。
本記事では、過不足算の基本的な考え方から応用問題の解き方までを図解を用いてわかりやすく解説します。
さらに、実際の問題に取り組む際に役立つ練習法も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
過不足算とは
過不足算は、中学受験の算数で頻出の応用問題の一つで、具体的には「過不足」から全体の数や量を求める問題を指します。
過不足算は、条件として「ちょうどになる場合」と「余る場合」「足りない場合」が与えられ、その比較を利用して解くのが特徴です。
たとえば、集めたお金や配るお菓子など、数量のズレに注目して計算を進めます。
問題を解くためには、余りや不足を差として扱い、それが何回分に相当するのかを式で整理する力が求められます。
過不足算の問題では、まず過不足の違いを理解することが重要です。
「1個ずつ配ると2個余る」「2個ずつ配ると3個足りない」という場合、その差を活用することで求めるべき数量のヒントが得られます。
したがって、過不足算は「具体的な差」や「繰り返しの単位」を計算の軸として考えます。
基本的な考え方を身につけることで、より複雑な条件でも柔軟に対応できます。
特に、問題文を図や表に整理する習慣をつけると、数字の関係性が一目でわかるため、解きやすくなります。
過不足算の解き方【3つのポイント】
過不足算を効率よく解くためには、条件を正しく整理し、視覚的な理解や問題の特徴を活かすことが大切です。
ここでは、過不足算を解くための重要な3つのポイントを紹介します。
それぞれのポイントを押さえれば、基本から応用問題までスムーズに解けるようになります!
過不足の差を整理する
過不足算を解く基本は、問題に出てくる「余り」や「不足」の差をしっかり整理することです。以下に簡単な例題を使って解説します。
解き方
条件を整理する
問題文の情報を基に、次のように式を立てます:
「5個ずつ配る場合」:全体の個数 =5✖️人数ー4
「3個ずつ配る場合」:全体の個数 =3✖️人数+2
差を考える
2つの条件の差を取ると:(5✖️人数ー4)ー(3✖️人数+2)=0
これを整理すると:2✖️人数ー6=0
人数を求める
両辺に6を足すと:2✖️人数=6
さらに、2で割ると:人数=3
全体の個数を求める
人数が3人とわかったので、どちらかの条件に代入します。
「3個ずつ配る場合」で計算:3✖️3+2=9+2=11
答え
人数:3人
全体の個数:11個
ポイント
過不足算では、条件の「余り」や「不足」に注目して差を整理することで、問題をシンプルに解くことができます。
計算前に情報を丁寧に整理することが成功のカギです。
面積図を活用する
面積図を使うと、過不足算の問題を視覚的に整理でき、条件がわかりやすくなります。
以下に簡単な例題を使って解説します。
解き方(面積図を活用)
条件を面積図に落とし込む
条件2(6個ずつ配ると4個足りない)
面積図で縦を「6個」、横を「人数」とする長方形から不足の4個を引いたものが全体の個数になります:
全体の個数=6✖️人数ー4
条件1(4個ずつ配ると6個余る)
面積図で縦を「4個」、横を「人数」とする長方形に余りの6個が加わります:
全体の個数=4✖️人数+6
面積図の差に注目する
「4個ずつ配る場合」と「6個ずつ配る場合」の面積図を比較すると、
縦の差は6 ー 4 = 2個。
この差に横(人数)を掛けたものが、余り6個と不足4個の合計に等しいことがわかります:
2✖️人数=6+4
2✖️人数=10
人数を求める
両辺を2で割ると:人数=5
全体の個数を求める
人数が5人とわかったので、どちらかの条件を使って全体の個数を計算します:
「6個ずつ配る場合」で計算:全体の個数=6✖️5ー4=304=26
「4個ずつ配る場合」で計算:全体の個数=4✖️5+6=20+6=26
答え
配る人数:5人
全体の個数:26個
ポイント
面積図では「縦の差」「余りや不足の差」に注目することで、条件を視覚的に整理できます。
これにより、問題文を読み解く際の負担が軽減されます。
過不足の倍数関係に注目する
過不足算では、余りや不足が特定の倍数関係になっている場合があります。
この特徴を利用すると、効率よく解答を導けます。
以下に簡単な例題を用いて解説します。
解き方
条件を整理する
- 3個ずつ配る場合:
お菓子の総数=3✖️人数+7 - 5個ずつ配る場合:
お菓子の総数=5✖️人数ー1
この2つの条件から、総数は「3 ×✖️人数 +7」と「5 ×✖️人数 ー1」の両方を満たす値です。
余りや不足に注目して倍数関係を見つける
「余り7個」と「不足1個」の差を考えます:7+1=8
この8個は、縦の差(1人あたりの配る個数の差)である 5ー3=2の倍数にあたります。
したがって、人数は次のように求めます:
人数=8➗2=4
最小の総数を計算する
人数が4人の場合、総数を計算します:
- 3個ずつ配る場合:3✖️4+7=12+7=19
- 5個ずつ配る場合:5✖️4ー1=20ー1=19
どちらの条件でも一致するため、最小のお菓子の個数は 19個 です。
答え
お菓子の総数:19個
ポイント
- 倍数関係に注目することで、試行錯誤を減らして効率よく解けます。
- 余りや不足の差が配る個数の差(縦の差)の倍数になることを利用しましょう。
過不足算問題を解く時の注意するべきポイント8つ
先程の例題1をもとに注意ポイントを考えていきましょう。
1人に3個ずつ配ると2個余り、1人に5個ずつ配ると4個足りません。このとき、配る人数と全体の個数を求めなさい。
問題の条件を正確に理解すること
「余る」と「足りない」の意味を正しく捉えます。
- 「余る2個」:配り終わった後に2個残るということ。
- 足りない4個」:配るのに4個不足するということ。
ひとりあたりの配る個数の差に注目すること
1人に3個ずつ配ると1人に5個ずつ配るとの差は「2個」
ひとりあたり「2個」多く配ると全体でどう変わるか考えます。
全体の余りと不足の差を考えること
「余る2個」から「足りない4個」への変化
2個余っていたものが、4個足りなくなるということは、全体で「6個」減ったことになります。
家族の人数を求める際の計算方法に注意すること
ひとりあたりの増加分(2個)× 人数 = 全体の減少分(6個)
ここで、「人数 =3人」と計算できます。
総数を求めるときの確認
どちらのケースでも総数が一致するか確認します。
- 2個ずつ配る場合:
- 2個×6人+5個(余り)=17個
- 2個×6人+5個(余り)=17個
- 3個ずつ配る場合:
- 3個×6人−1個(不足)=17個
- 3個×6人−1個(不足)=17個
両方でみかんの総数が一致することを確認します。
計算ミスを防ぐ
「個」や「人」などの単位を省略せずに書きます。
単位を明確にすることで、計算間違いや混乱を防げます。
論理的な流れを大切にする
ステップごとに理由を説明しながら解きます。
なぜそうなるのかを自分の言葉で説明してみます。
自分の言葉で説明できてこそ、理解できたことになります。
過不足算の問題7パターン【基本から応用まで】
過不足算 問題では、さまざまな状況が設定され、基本を応用して解く力が求められます。
具体的には、特定の条件下での数量の違いや計算のパターンを理解することが鍵となります。
ここでは、過不足算においてよく出題される代表問題の典型的なパターンを7つ紹介します。
解説:下の図で、太線部分の長方形の面積は、キャンデーの総数を表す。
かげをつけた部分の面積は、(8ー5) ✖️ 人数=36個より, 人数=12(人)
キャンデーは、8✖️12=96(個)
解説:下の図で、太線部分の長方形の面積は、みかんの総数を表す。
かげをつけた部分の面積は、(13ー10)✖️ 人数= 18+6より、 人数=8(人)
みかんは、10✖️8+18=98(個)
解説:下の図で、太線部分の長方形の面積は、クラス会の費用を表す。
①と②の部分の合計面積は、50✖️🔲(人数)=1500+750より、人数=45(人)
クラス会の費用(ピンク色の面積)は、300✖️45+1500=15000 (円)
解説:下の図で、太線部分の長方形の面積は、みかんの総数を表す。
1人に4個ずつ配ると、
みかんは、4×6=24(個)不足します。
かげをつけた部分の面積は、(4ー3)✖️人数=8+24よ、 人数=32(人)
みかんは、3✖️32+8=104 (個)
解説:下の図で、太線部分の長方形の面積は、会場に集まった人数を表す。
長いすに5人ずつすわると 5✖️4+(5ー2)=23(人分)の席があまります。
では、なぜ23人になるかの理解が非常に重要ですので、しっかり理解しましょう!
23人あまるとは(空いている人数)=
5人ずつ座る長いすが4脚空いている(20人分空いている)+5人ずつ座る長いす
1脚に2人のみすわる(3人分空いている)
①と②の部分の合計面積は、(5ー4)✖️脚数=12+23脚より、脚数=35 (脚)
会場に集まった人数(かげをつけた部分のピンクの面積)は、4✖️35++12=152 (人)
解説:面積図を使って解きます
面積図を用いると、ケーキの「値段」と「個数」の関係を視覚的に理解できます。
2つの面積図を比較する
- 縦:1個当たりの値段(180円と120円)
- 横:それぞれ買う個数
- 面積:総額(ケーキ代)
180円のケーキと120円のケーキで支払う総額(面積)は等しいため、余分に買えた「5個分」に注目します。
重ならない部分の面積を考える
- 余分に買えた 5個分 の値段(縦が120円、横が5個の長方形の面積)は:
120円/個×5個=600円 - この600円は、2つの面積図で重ならない部分の面積として扱えます。
3. 180円ケーキの図の重ならない部分を計算
180円ケーキの図で、縦の長さは:180円/個−120円/個=60円/個
600円の面積を「縦60円/個」の長方形の面積として横の長さ(個数)を求めます:
600円÷60円/個=10個
180円ケーキの予定個数
180円ケーキの予定個数は 10個 です。
ケーキ代を求める
180円ケーキの総額を計算:180円/個×10個=1800円
または、120円ケーキで総額を確認:
120円/個×(10+5)個=120円/個×15個=1800円
答え
180円のケーキを買う予定だった個数:10個
ケーキ代:1800円
面積図を使うと視覚的に分かりやすくなります。
問題の条件
- 太郎くん:1冊120円のノートを買った。
- 花子さん:1冊100円のノートを買った。
- 太郎くんの買った冊数は花子さんより 4冊多い。
- 太郎くんの代金は花子さんより 580円多い。
この条件を基にして進めます。
面積図で考える
ノートの代金を面積図で表します。
横(冊数):花子さんの冊数を基準に考えると、太郎くんの横の長さ(冊数)は花子さんより4冊分長くなります。
縦(1冊の値段):太郎くんは120円、花子さんは100円。
太郎くんと花子さんの代金の差に注目
下図の薄青色の部分が580円(太郎くんの代金は花子さんより 580円多い)です。
580円の差が生じる原因を次の2つに分けて考えます:
この580円を下図のように①と②に分けて考えます。
- ①の部分
4冊✖️100円/冊=400円 - ②の部分
580円ー400円=180円
②の縦の長さは、120円/冊ー100円/冊=20円/冊
太郎君の買った冊数は②の横の長さなので:180円➗20円/冊=9冊
答え
太郎くんは 9冊 ノートを買いました。
- 計算は「試行錯誤」または「一部を仮定」する方法で進めると、方程式を使わずに解けます。
- 面積図で「代金の差」を視覚化し、「冊数の差」と「単価の差」に分けて考えます。
過不足算の解き方に関するQ&A
過不足算の解き方に関するよくある疑問は下記の通り。
ここからそれぞれの疑問について、1つずつ詳しく解説していきます。
- 「差を使って考える問題」を速く解けるようになるには、どんな練習をすればいいですか?
- 面積図はどうして使うとわかりやすくなるのですか?
- 最大公約数を簡単に求める裏技はありますか?
- ノート以外の例で練習するなら、どんな題材が良いですか?
- 子どもがこのような問題で詰まってしまったとき、親はどのようにサポートすればいいですか?
- 方程式を使った解き方も将来必要になるのですか?
「差を使って考える問題」を速く解けるようになるには、どんな練習をすればいいですか?
「差を使う問題」に慣れるためには、まず条件を整理する練習が大切です。
ノートに「値段」「冊数」「差額」をそれぞれ書き出し、関係性を図や表にまとめる練習をしましょう。
また、過去問や類似問題を解いて「差の原因」を見つける力を養うのが効果的です。
例えば、異なる値段の品物を比較する問題や過不足算の問題など、似た構造の問題を繰り返し解くことで解法に慣れます。
面積図はどうして使うとわかりやすくなるのですか?
面積図は「縦」「横」「面積」がそれぞれ値段・冊数・代金を表し、条件を視覚的に整理できるからです。
文章だけだと複雑に見える条件も、図にすると「ここが余分」「ここが不足」などがひと目で理解できます。
また、重なる部分と重ならない部分を考えると、条件を効率よく式に直せます。
特に算数が苦手な場合や、問題文が長い場合に効果を発揮します。
最大公約数を簡単に求める裏技はありますか?
最大公約数を求めるには「ユークリッドの互除法」が便利です。
この方法を使えば、簡単に最大公約数が求められます。
ノート以外の例で練習するなら、どんな題材が良いですか?
ノート以外の題材としては、同じような「値段」と「数量」が絡む状況が良いでしょう。
例えば:
- お菓子やジュースを異なる値段で買う問題
- 電車やバスの運賃と乗車人数を比較する問題
- 異なる単価で文房具を購入する問題
これらの題材を使って練習することで、似た問題に柔軟に対応できる力が身につきます。
子どもが過不足算の問題で詰まってしまったとき、親はどのようにサポートすればいいですか?
詰まった場合は、まず問題の条件を一緒に整理することから始めましょう。
「値段」「冊数」「差額」などの情報を表や図に書き出すよう促してください。
その際、「全部自分で考えて」と押しつけるのではなく、「この部分はどう考えたの?」とヒントを与えながら進めるのがポイントです。
また、正解にたどり着くよりも「どこでつまずいたか」を見つけることを重視してください。
方程式を使った解き方も将来必要になるのですか?
中学受験では方程式を使わない解き方が基本ですが、中学生以降の学習では方程式が必要になります。
そのため、小学生のうちから「条件を整理して、関係を式に表す」練習をしておくと、中学に入ったときにスムーズに方程式を理解できます。
ただし、小学生には視覚的でわかりやすい解法(面積図や表)で解くことが優先されるため、今はその練習を大切にしてください。
まとめ:過不足算問題のわかりやすい解き方
過不足算 問題は、条件の整理や数の関係を考える力が求められる中学受験算数の重要なテーマです。
本記事では、基本の考え方や応用問題への対応法を解説しました。
特に、面積図を活用した解法は視覚的に理解しやすく、問題を整理する力を養うのに効果的です。
過不足算に慣れるためには、基本問題から徐々にステップアップし、さまざまなパターンの問題に取り組むことが大切です。
また、保護者も学習サポートの方法を知り、一緒に条件を整理することで、子どもの理解を助けられます。
しっかりと過不足算 問題を克服し、自信を持って受験に臨みましょう。
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過不足算の基本的な考え方を丁寧に解説します。
応用問題の具体例を挙げ、解き方をわかりやすく説明します。
面積図を使った解き方を解説し、問題を整理する力を養います。
過去問や類似問題への取り組み方を具体的に提案します。
保護者がどのように子どもをサポートすれば良いか、具体的な方法を紹介します。